親とは子供を虐待するものなの?

回復支援プログラム 信頼で防ぐ親の子供虐待

子供の虐待経験を持つ親が再び虐待することを防ぐ、回復支援のための「MY TREE ペアレンツ・プログラム」が、親の行動に変化をもたらす希少な取り組みとして注目されている。米国で子供の虐待や女性への暴力の防止にかかわる専門職の養成に昭和56年から携わってきた、エンパワメント・センター(兵庫県西宮市)主宰の森田ゆりさんが開発した。平成15年から、大阪府、三重県を中心に行われ、これまでに約280人が修了。来年度には関東での実施も計画されている。

 「MY TREE」は自分の虐待的行動に悩む親10人が、2〜3人のファシリィテーター(支援者)と行う、計16回のプログラム。苦しい経験を語り合う仲間同士の「人とつながっている」という喜びが体の内から積極的な力を引き出していく。子育て方法の間違いや、親本人の欠点を指摘する手法を取らないのは、それが消極的な思考を生むだけだという考え方に基づいている。プログラムは国際的な児童虐待防止学会で発表されたこともある。

 参加者は、怒りの抑制方法や、自分を肯定する意識を高める手法を学ぶとともに、辛(つら)い経験を語り、仲間の話を聞くことでお互いを認め合う。虐待をした親は孤立感や疎外感が強く、自分が必要とされた経験が少ないとされるからだ。

 「自分は必要とされない人間だと思わず、価値ある人間と心から感じてもらいたい」と森田さん。ある30代の母親は、1歳半の子供と無理心中を図り、自分だけ死にきれなかった過去の苦悩を語れたことで、生きる姿勢が大きく変わったという。

 森田さんは、子供に向けられた怒りは「仮面」であり、その裏には「恐れ」「身体的苦痛」「悔しさ」などさまざまな感情が隠れていると考える。参加者は「怒りの仮面」の裏にある内面から自分を語る。ある母親は「怒りは複雑な気持ちで、一つ一つを誰かに話せたとき、怒りの爆発はなくなったように思います」と感想を寄せている。

 参加者が連絡先を交換したり、プログラム以外で会ったりすることは原則的に禁止。傷つきやすい当人たちだけで会うと、グループ内で築いた信頼関係が損なわれることもあるからだ。

 「『MY TREE』で学んだことを心の宝石箱におさめて、虐待しそうになったときなど必要なときに取り出して使ってほしいのです」

 コミュニケーション力も学ぶ。「子供を褒める」という課題を出すと、翌週やって来たある親は「うちの子は褒める部分がない。しかってばかりだ」と言う。ファシリィテーターはここで「新聞を取ってくるとか簡単なことを子供に頼んでください」とアドバイス。すると翌週、この親は「子供に『ありがとう』と言えた。子供はもっといいことをしようとした。褒めると楽ですね」と目を細めた。このように、自分のかかわり方が変われば、子供も変わるということを経験してもらう。

 プログラムの根底には「自然からもらった自分の生命力を取り戻す」という考え方がある。参加者には自宅から会場までの道にある樹木を1本、「自分の木」と決めることを勧める。プログラムは秋に始まり春に終わる場合が多い。葉もない木が、みずみずしい木に変わる様子から感じることを大切にしてもらう。

        

 「MY TREE」は来年度から、宮崎、高知、静岡、埼玉の各県での実施も計画中。今年度の募集は締め切ったが、問い合わせはmytree@mail.goo.ne.jpか〒662−0891兵庫県西宮市上ケ原1番町1の122 エンパワメント・センター。



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